今住んでいるマンションは,いわゆるメゾネットタイプというやつで,1階と2階に分かれており,「折り返し階段」(7段ずつ,全部で14段)になっております。確かに,天井が吹き抜けになっており解放感があり,娘がまだ小学生の時にこのマンションの形状を珍しがって気に入ったこともあって購入しました。
でもその娘も今は独立して東京で一人暮らしをしており,年に3,4回帰省するくらいです。私たち老夫婦二人にとっては階段の上り下りも少し負担ですし,少し広すぎるきらいもあって最近では住み替えを考え始めております。
さて,マンションの住み替え計画の点はともかくとして,うちのカミさんは昔から朝早く起きて朝食を作ってくれています。本当に感謝,感謝です。カミさんは最近では台所で朝食を作る際にはYouTubeで音楽を聴いているのですが,私からの影響もあってクラシック音楽を適当に選択して聴いていることが多いです。毎日朝食は午前7時と決まっております。
その時間に合わせて7時ちょっと前に私が階段を下りてくる時は,いつも卵焼きを作っている工程の時です(笑)。毎朝,大抵はそうなっているのです。そして朝の挨拶を交わして私も配膳を手伝っています。
一昨日の朝でしたか,ちょうど私が階段を下りていた時に流れていたのが,リヒャルト・ワーグナーの「ジークフリート牧歌」でした。穏やかで味わいの深い佳い曲ですね。意識して選んだ訳ではないのでしょうが,カミさんがいつものとおり卵焼きを作っていた時に流れていたのがこの曲でした。学生時代にはヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮,ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団演奏のこの曲のレコードを聴いていましたが,結婚する際にレコードは全部処分してしまいました。
この「ジークフリート牧歌」というのは,ワーグナーが愛妻のコジマ(フランツ・リストの娘)の誕生日及びクリスマスプレゼントとして作曲したものです。才能ある作曲家というのは凄いですね。妻へのプレゼントに自分で曲を作って贈るんですから。またこの曲の非公開初演の様子が素晴らしい。要するにサプライズだったのです。
早朝,まだコジマが眠っている最中に楽団員がその寝室から階段全体にかけてスタンバイし,階段頂上に陣取ったワーグナーが指揮を初めて静かに音楽の開始・・・。愛妻コジマが目覚めて,驚きとともに感激に浸ったことは言うまでもありません。
これは小編成の室内オーケストラで演奏される20分くらいの曲ですが,ワーグナーとしては,前年に息子ジークフリートを生んでくれた妻にねぎらいと感謝の気持を自らの音楽で示したのです。