今年も残り少なくなりました。そして今の季節のこの爆弾低気圧,すなわち寒波の物凄いこと・・・。私は冬場でもめったに手袋まではしないのですが,この寒さですから通勤時には手袋をしています。
12月25日,作家の渡辺京二さんが92歳で亡くなりましたね。心よりご冥福をお祈りいたします。もう10数年前になりますが,渡辺京二さんの「逝きし世の面影」(平凡社ライブラリー)という本を読んで本当に深く感銘を受けました。それ以来,私は人から何かお薦めの本はないかと尋ねられたら,必ずこの本も薦めるようにしています。それくらい素晴らしい本なのです。この本の帯には「読書人垂涎の名著」と銘打たれています。そしてくどいようですが,私の記憶に間違いがなければ,やはり今年2月に亡くなられた石原慎太郎さんも,この名著について「これはもう現代人必読の名著である!」と評していたと思います。
この本の章立ては,「ある文明の幻影」,「陽気な人びと」,「簡素とゆたかさ」,「親和と礼節」,「雑多と充溢」,「労働と身体」,「自由と身分」,「裸体と性」,「女の位相」,「子どもの楽園」,「風景とコスモス」,「生類とコスモス」,「信仰と祭」,「心の垣根」となっております。この日本には,かつては間違いなくこの本で描かれたような一つの貴重な,失いたくない文明が存在していたのです。願わくばこのような貴重で愛すべき文明のあり様を少しでも存続させたい。
この本は,近世から近世前夜にかけてを主題にし,幕末維新に訪日した外国人たちの滞在記を題材にしていますから,当時の文明のあり様の描写としては割と客観性があるでしょう。ウィキペディアには,数年前に亡くなられた評論家西部邁さんのこの本に対する評が次のように紹介されています。
西部邁は『逝きし世の面影』について「渡辺京二さんが『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー)という本で面白いことをやっていまして,幕末から明治にかけて日本を訪れたヨーロッパ人たちの手紙,論文,エッセイその他を膨大に渉猟して,当時の西洋人が見た日本の姿-いまや失われてしまった,逝きし世の面影-を浮かび上がらせているのです。(中略)この本を読むと,多くのヨーロッパ人たちが,この美しき真珠のような国が壊されようとしていると書き残しています。」と評した。
どうです,皆さん。おそらくは時間的に余裕のあるこの年末年始,ゆっくりとこの名著を味わってみては。確かにページ数の多さは克服しなければなりませんが(笑),内容的には決して後悔はさせませんよ。