この連休中に,「東京物語」という映画を観ました。小津安二郎監督作品で,主演は笠智衆と原節子です。この作品は昭和28年(1953年)に公開された古い映画ですが,国内外でとても高い評価を得ています。
私は以前,この作品を断片的にしか観ておりませんでしたが,今回初めて通して観てみました。いろいろと考えさせられる,しんみりとした,切ない映画でしたね。笠智衆の枯淡の境地,原節子が醸し出す誠意と優しさと美しさ・・・。
ウィキペディアの記載を引用すれば,上京した年老いた両親とその家族たちの姿を通して,家族の絆,親と子,老いと死,人間の一生,それらを冷徹な視線で描いた作品であり,家族という共同体が年を経るとともにバラバラになっていく現実を,独特の落ち着いた雰囲気でつづっている秀逸な作品です。観ていて切なくなりますけどね。何やら自分の死生観にも影響を及ぼすような。
先にも述べましたが,この作品は国内はもちろんのこと,海外でも高い評価を得ております。海外での公開は昭和32年(1957年)にロンドンで上映されたのが最初で,翌年に第1回サザーランド杯を受賞し,海外での小津作品の評価が高まるきっかけになりましたし,1972年にはニューヨークでも公開され,アメリカの批評家たちからも賞賛を受けました。2012年に英国映画協会の映画雑誌『Sight&Sound』が発表した史上最高の映画ベストテンの映画監督が選ぶランキングでは第1位に選ばれてもいます。
それにしても原節子という女優の何と美しいこと。1963年に小津安二郎監督が亡くなり,彼女は43歳ころに突如として事実上の引退状態になり,その後は公の場に姿を現すこともなくその潔い引き際も際立っています。美貌,独身,潔い早い引退,その後の隠遁生活など,スウェーデンの女優グレタ・ガルボと共通した面があります(グレタ・ガルボのことはこのブログでも触れたことがありますので,ブログ内検索で「ガルボ」とキーワードを入れて検索してみてください)。記事によれば原節子は,たばことビールと麻雀が好きだったようで,親近感がわきます。私もビールと麻雀は好きですので(笑)。彼女は鎌倉でヴェールに包まれた隠遁生活を送り,95歳で亡くなりました。