名古屋の無料法律相談ならあかね法律事務所


無料法律相談受付電話番号052-223-2101

受付時間(平日)
9:00〜18:00

無料電話
法律相談
無料面談
法律相談
アクセス

MENU

弁護士ブログ

2023/10/03

[カテゴリ]

 

先週のことになりますが,9月29日の金曜日,ぽっかりと夜空に浮かんでいたまん丸のお月さんの姿の誠に見事なこと!本当に,本当に素晴らしい月でした。今年の中秋の名月は9月29日の夜で,この日は晴天でもありその見事な姿を自宅のベランダから拝むことができました。旧暦8月15日の月を中秋の名月と呼んでいるのですね。うちのカミさんはベランダに出てスマホで撮影しておりました(笑)。

 

月という文字ですぐに思い浮かべてしまうのが,江戸末期から明治半ばに生きていた俳人井上井月のことです。私はその正統派の俳句の数々を高く評価しており,最期を迎えるまでの約30年もの間,信州の伊那谷を中心に漂泊していたこの俳人に思いを致すのです。このブログでもかつてご紹介しましたように,今から10年ほど前,春の連休を利用して家族で伊那までドライブし,井月のお墓やいくつかの句碑を訪ねて回り,お昼ご飯は地元の名物であるソースかつ丼をいただいたことを覚えております(笑)。

 

それにしても,井月はなぜ「井月(せいげつ)」という俳号を選んだのでしょうか。私の蔵書,「井上井月研究」(中井三好著,彩流社)によると,どうやら彼の少年時代の淡い恋に由来しているようなのです(同著19~20頁)。平安時代の歌物語である「伊勢物語」には「筒井筒」の挿話があり,これは,地方官同士の家の女の子と男の子が仲良く井戸の回りで遊んだりしていた。しかしそれぞれの親の任地が替わり,引越しによって二人は離れ離れになってしまった。でも二人が成長するにしたがって,子供の頃に抱いた淡い恋情が次第に大きくなり,二人は互いに求愛の歌を交わすようになって,ついには結婚して結ばれるという初恋物語です。

 

どうやら井上井月にも似たような経験があったらしく,幼い頃に井戸の辺で仲良しの女の子と遊んでいて,組井から井戸の中に映る月を見てその澄んだ月の美しさを喜び合った時の記憶を俳号にしたと考えられているのです。淡い恋の記憶が背景にあったのですね。

 

本当に井月の俳句は深い教養に裏付けられた正統派,本格的な作品が多く,句を鑑賞して思わずその情景が思い浮かぶような傑作が多いと思います。あの不定型自由律俳句の種田山頭火も井月に憧れ,漂泊,苦労の末にその墓に参ったのですし,あの芥川龍之介も井月の句を高く評価しておりました。月にちなんだ句を紹介してみましょう。句意については,「井上井月研究」(中井三好著,彩流社)の183~184頁の解説によっています。

 

「月さゝぬ家とてはなき今宵かな」

※伊那盆地の周りにはいくつもの山越えの道が付いていて,それぞれの峠から伊那盆地を一望することができ,月の夜は殊に美しく見える。月は天空にあるから月の(光の)ささない家はない。

 

「名月や院へ召さるゝ白拍子」

※白拍子は平安末期から鎌倉時代にかけて行われた歌舞のことであるが,この発句ではそれを歌い舞う遊女のことである。歌舞音曲に優れた「院」といえば,後白河法皇のことであろう。井月が京の街の空に出た名月を眺めた時,こんな美しい夜に法皇は白拍子を召されるのであろう・・・。

 

みなさん,井月の句(作品)はお勧めですよ。彼の伝記や作品解説など総合的な研究で出色の本はこの本だろうと思いますし,作品全体を通覧,鑑賞するのであれば,「井月句集」(復本一郎編,岩波書店)がお勧めです。

ブログ内検索

カレンダー

2023年10月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

カテゴリー


PAGE TOP