数あるクラシックの曲の中には,「(遺作)」と表記されている曲があります。そもそも「遺作」というのは何を意味するのでしょうか。
以前の私は,作曲家の最晩年に作られた曲,あるいは絶筆,その生涯の最後に作曲された曲などを意味するのではないかとばかり思っていました。でも,「遺作」の本当の意味は,生前に世に出す作品として作曲されたのだけれど,結果的に発表(出版)されないまま死後に遺された作品を意味します。要するに未発表曲ですね。
なぜこのような素晴らしい曲が未発表だったのだろう,死後にその楽譜が発見されるまでなぜ世に出されなかったのだろうと不思議に思う名曲もあります。ショパンにはそういった「遺作」が少なからず存在します。
例えば,夜想曲(ノクターン)第20番嬰ハ短調(遺作)です。これは「戦場のピアニスト」という映画の中でも使われ,哀切極まりない美しくも物悲しいメロディーであり,正に名曲です。それに,即興曲第4番嬰ハ短調(遺作)などは「幻想即興曲」として人口に膾炙したあまりにも有名な曲で,これもやはり名曲です。最晩年どころか,前者は20歳の時,後者は24歳の時にそれぞれ作曲されています。こんなに素晴らしい名曲が生前なぜ発表されなかったのかとても不思議です。未発表としたことについて,ショパンにはそれなりの理由があったのでしょうね。そのあたりはとても興味があります。
10月17日はショパンの命日です。当時不治の病とされていた肺結核で39歳の若さで鬼籍に入りました。パリのマドレーヌ寺院で挙行された葬儀の際には,オーケストラ用に編曲されたピアノソナタ第2番の第3楽章「葬送行進曲」が奏され,その後は生前ショパンが望んでいたとおりモーツアルトの「レクイエム」,その後はやはりショパンの前奏曲(プレリュード)ホ短調(作品28-4)とロ短調(作品28-6)がオルガンで奏されたようです。葬儀は10月30日だったようですから,もうその場では肌寒い秋風が吹いていたのかもしれません。
今日は休肝日と決めていたのですが,やっぱり自宅で晩酌したくなりました。寝る時は愛蔵CDの中からショパンの夜想曲集(ノクターン)なんかを選んで,それらを聴きながら,秋の夜長,深い眠りにつきたいものです。