2年ぶりに福井までうちのカミさんと一緒に蟹を食べに行きました。気楽なバスツアーです。たまにはこういう旅も良いものです。空気もおいしいし,何よりも旬の蟹(本ズワイガニ)が美味しいのですよ。ちゃんと「いただきます」をして,蟹二杯分の蟹づくしをいただきました。本当に美味しかったですし,隣のうちのカミさんも満足そうでしたね。
バスツアーですから,道中は土産物屋さんなどにも立ち寄りました。越前(福井)の海産物のどれもこれもが本当に美味しそうですし,漁師さん,水産加工に携わる方々,そして土産物屋さんの素朴ながらも心のこもった対応,料理旅館のスタッフの方々,彼らには頭が下がります。
想えば,平安の時代の仏教説話集などには動物の殺生は罪であり,そういう罪をおかせば成仏できないなどと戒められるお話が多くあります。私も年を経るごとに古典にかえりたいという気持ちが強くなり,数年前には「梁塵秘抄」(後白河法皇編纂)をじっくりと味わいました。これはその当時に流行した歌謡を編んだものであり,今様歌謡の集大成のようなもので,当時の庶民,遊女,様々な生業の人々の心情が窺えます。
例えば,漁や狩猟をしてどうしても動物の殺生をしなければならない生業の者,漁師や猟師の嘆きを表したものに次のような歌があります。
「はかなきこの世を過ぐすとて 海山かせぐとせしほどに よろずの仏にうとまれて 後生わが身をいかにせん」
仏教の教えの色濃いその当時の漁師さんたちは,そのような罪の意識に苛まれながらもこれを生業として,人々の食を確保してくれていたんですね。食事を重ねるということは,どうしても自分自身そしてやはり誰かが生き物の命を奪っているということになるのですが,それも仕方ありません。ちゃんと「(命を)いただきます」をして,このたびも蟹を美味しくいただきました。漁師さん,本当にありがとう。
このバスツアーの行程には,氣比神宮も含まれており,2年ぶりに春日大社(奈良県),厳島神社(広島県)と並び称される日本三大木造大鳥居を拝むことができましたし,松尾芭蕉の像と句碑も見ることができました。そして晴天に恵まれたこの日,越前の海も美しかった。