大久保「やー,久しぶりだな西郷」
西 郷「おう。ちょっとの間,腰の痛みと背中のハリがあってな,少し酒を控えてたんだ。でも,美味しい季節になったんで,お前を誘った・・・。」
大久保「腰とかは大丈夫か。」
西 郷「ああ。知り合いの紹介でお灸をすえてもらえる治療院に行った。お灸というのは結構効くぞ。」
大久保「そうか,それは良かった。そろそろ,おでんも美味いしな。それにしても,ずいぶん改まった酒の誘い方しやがって,さては何かあったか?」
西 郷「別にどうということはないが,民主党政権もやりたいようにやっとるな。政治の話よ。夫婦別姓法案を来年の通常国会に提出するんだと。」
大久保「うーん。先回りするようだけど,俺は反対だ。細かい理屈は苦手だけど,伝統的な家族の一体感,きずなが失われる。」
西 郷「確かに選択的な制度だから,これまでどおり家族全員が同じ姓を名乗りたいということだったらそれは当然できる。当たり前だわな。俺ももちろんそうする。でも,現在民主党が考えている案は,夫婦別姓が選択されて夫婦が別々の姓を名乗った上で,さらにその間にできた子も,その出生ごとにどちらの姓を名乗るかを決めることができる制度のようだ。」
大久保「えーっ。どんな家庭じゃ。例えば,サザエさんの家庭だったら・・・。まず磯野波平さん夫婦の結婚当時にさかのぼっていくと,奥さんのフネさんは旧姓石田だから,別姓が選択されたら磯野波平・石田フネという夫婦が誕生。次に,今後生まれる子の出生ごとに名乗る姓が親によって決定されるとすると,例えば,石田サザエ,磯野カツオ,石田ワカメということもあり得る。さらに,石田サザエがフグ田マスオとめでたく結婚して夫婦別姓が選択され,その後にタラちゃんが生まれると,場合よっては石田タラオとなる。要するにこの家族は,3つの姓が入り乱れる。」
西 郷「タマはどうする?」
大久保「バカ。タマは猫だから,さすがの民主党案でも名字はないだろ!」
西 郷「でもなあ。産経新聞の記事によると,この夫婦別姓に関する内閣府による世論調査結果では,賛否の意見は拮抗しているというし,その5年前の同じ調査時よりは夫婦別姓反対の意見が5ポイント以上も増え,賛成が5ポイント以上も減っているようだぞ。それに,ある民間団体が平成13年に東京都内の中高生を対象に,自分の両親が別姓になったら『嫌だと思う』と答えた人が41.6%,『変な感じがする』と答えた人が24.8%で,こういう答えの人は全体の66.4%で約3分の2に達してる。新聞でも,この夫婦別姓の議論は,働く女性の利便性のみが指摘され,子どもの視点は見落とされがちになっていると総括されている。」
大久保「それでも新聞報道によると,千葉景子法務大臣と福島瑞穂少子化等担当大臣とが会談し,やはり夫婦別姓法案を来年の通常国会に提出する方針を確認し合ったということだ。」
西 郷「千葉景子という議員は筋金入りの死刑廃止論者だから,恐らくこの大臣の下では死刑執行署名がなされることはないだろうし,この点に関する刑事訴訟法の規定も骨抜きになるだろう。それに,福島瑞穂という議員は,約17年前には『生まない選択 子どもを持たない楽しさ』という本を書いている。こういう人がこともあろうに少子化担当の大臣なんて・・・。」
大久保「民主党はこれからもますますガンバルと思うぞ。永住外国人の地方参政権付与の法案提出に向けて動き出したようだし。」
西 郷「この問題こそ,今現在国民にアンケートをとったら,反対論の方が圧倒的に多いと思うぞ。マニフェスト,マニフェストとやかましくがなり立てている民主党も,この問題はどういう訳かマニフェストには記載していなかったと思う。それなのに,素早く中央突破しようとしている。それよりも公明党がこの法案を真っ先に出そうともしている。」
大久保「それと,あの『東アジア共同体』というのは一体何なのだ。どういう具体的な内容を持っているんだろう。関税障壁を完全になくすのか,自由に人が行き来できるようにしてしまうのか,通貨まで統一してしまうのか,はたまた主権の一部を委譲してしまうのか,よう分からんわ・・・。外交というのは,本当に国益と国益とのぶつかり合いだ。リアリズムを感じながら外交しないと。『友愛』だけではなぁ。交渉の相手方が微笑のかげで鎧をまとっていたりする。」
西 郷「それに国家戦略室か局かは一体どういう権限と役割をもっているんだろうか。早くも財務相は『予算編成権はあくまでも財務相にある!』なんて言って,担当大臣同士でいわば権限のさや当てみたいなことをしているし。行政刷新会議なんかもどういう権限と役割を担っているのかも分からないし・・・。民主党の議員だっていろいろなことを言っているくらいだから,よく準備されないまま,よく練られないままにスタートしてしまったというのが実情なんじゃないのか。」
大久保「ある月刊誌に面白いことが書いてあった。今度の総選挙では,自民党にお灸をすえるために多くの有権者は民主党に投票した,でも,これにより結局は有権者自身がお灸をすえられることになるとさ。ハッ,ハッ,ハッ。お前の腰と背中のお灸みたいだな。」
西 郷「とても笑えないよ。」