僕としても,このブログであまり政治的なことは書きたくない。もっと楽しい話題,例えば,ぜんまいざむらいとか,新撰組とか,神のように崇めているバッハのことなんかを書きたいのだ。でも,さすがに最近の民主党,とりわけ鳩山由紀夫という人の迷走ぶり,脳天気ぶりを見ていると,話題にせざるを得ない。僕も国を憂えざるを得ないのだ・・・。
それにしても,一体全体,この鳩山由紀夫という人の頭の中はどうなってしまっているのだろうか。きっと凄いことになっているのではないだろうか。米軍普天間基地移設問題をめぐるこの人の言動は,もはや首相としては常軌を逸している。
オバマ大統領が来日した際の日米首脳会談で,同大統領が早期の履行を求めたのに対し,鳩山首相は「Please trust me(どうか私を信じてほしい)」と述べ,同大統領は「Absolutely, I trust you(もちろん,あなたを信じますよ)」と答えたということだ。この米軍普天間基地移設問題の重要性は大統領来日前からアメリカの高官から強調されていたのであり,首脳会談で鳩山首相が特に異議を留保することもなく,このようなやり取りがなされれば,アメリカとしては,設置が合意された閣僚級作業グループでの協議内容が従前の日米合意の早期履行が前提となると信頼するのは当然である。ところが,大統領を日本においたままAPEC首脳会議のためにシンガポールに出かけてしまった鳩山首相は(このこと自体外交儀礼に反すると思うが),あろうことか,「オバマ大統領とすれば,日米合意を前提と思っていただろうが,それが前提なら作業グループを作る必要がない。」と明言したのである。それだったら,その旨を堂々と首脳会談の時に明言しろよ。基軸となるべき同盟国に明らかな不信感を抱かせるような,手のひらを返すようなこの鳩山発言に,民主党の長島昭久防衛政務官ですら「オバマ大統領が『今の日米合意を迅速に実行する』と言ったにもかかわらず,首相が(打ち消すような)話をして正直びっくりした。」とテレビで戸惑うといった始末である。
この基地移設問題の最終決断時期についても,鳩山発言はブレにブレている。10月16日には名護市長選(平成22年1月)と県知事選(同年11月)の間くらいには決断すると明言したのに,その1週間後(10月23日)には,名護市長選の後でと言っているつもりはない,早く結論がでればそれに越したことはない,と前言を事実上翻している。ところが,オバマ大統領との首脳会談の直後,鳩山首相は今度は,「名護市長選にしたがって方向性を見定めてゆくこともある。市長選が全く念頭にないというわけではない。」と発言しているのである。ここまでくると,アメリカは,あきれかえっているのではないだろうか。
どうやら,鳩山首相が何かにつけて名護市長選や知事選に言及するということは,自分自身で高度に政治的な問題に対する判断力,決断力を欠いているものだから,市長選などの選挙結果をバックボーン,力にしてアメリカと再交渉ができればなどといった魂胆なのではないかと穿ってみたりもする。でも,これまで約14年もかけて日米でこの問題を協議し,両国でこれが最良の方法だと合意し,名護市も最終的には苦渋の選択をしたのである。国防というのは同盟国との信頼関係を維持しながら,最終的には国自体が判断しなければならない問題である。この点をめぐる鳩山首相の言動は,その一方で「日米同盟を外交の基軸と位置づけている」との言葉とは裏腹に,明らかに同盟の相手方の不信を買い,国益を損ねている。
鳩山由紀夫という人は,この防衛,安全保障の問題だけでなく,その他のマターでも言うことがコロコロ変わる。変節といってもいい。それは結局,定見がないからである。これに尽きる。奥さんと一緒にファッションショーに登場したり,政府専用機の中で奥さんと指相撲に興じている場合ではない。一国の宰相に定見がないというのは,非常に深刻な事態である。