鳩山由紀夫という人の定見のなさ,存在の軽さ,無責任さ,これはもう宿痾のようなものであろう。思えばこの人が内閣総理大臣に就任して以降は,その場限りの言動によって釈明に追われてきた。国語辞典によると,釈明というのは,誤解や非難などを受けた時に自分の立場や事情などを理解してもらうために説明すること,とある。正に釈明につぐ釈明の連続であった。米軍海兵隊普天間基地移設問題しかり,このたびの「子ども手当」の財源問題にしてもしかり。
この人は,子ども手当の支給について,2月14日には「財源は無駄を削減するなかで,余裕ができた分だけやる仕組みを作ろうと思っている。」と発言し,マニフェストでうたわれた1人当たり月額2万6000円の満額支給にはこだわらないとも受け取れる発言をしたかと思うと,これを問いただされた翌15日は,平成23年度は当然予定通り,満額をやる。そのための財源も,歳出削減を徹底的にやって生み出していく。」と釈明している。どう考えても論旨,趣旨が一貫しているとは思えない。それに,このこども手当の満額支給を本当に実施すると5兆円を超える財源が必要になる。でもどう見てもこの人よりはものを知っていると思われる野田財務副大臣も峰崎財務副大臣も口を揃えてそんなことは困難だと述べた。この鳩山という人は本当に成算があってものを言っているのか極めて疑わしい。言葉が軽すぎるのである。
陸上自衛隊の中沢剛一等陸佐が2月10日の日米共同訓練開始式で,「同盟は外交や政治的な美辞麗句で維持されるものではなく,ましてや『信頼してくれ』などという言葉だけで維持されるものでもない。」と訓示した。これにより彼は注意処分を受けた。軍律からしてこれは仕方がないという見方もあろう。彼が引用した「信頼してくれ」という言葉は,オバマ大統領が来日した際にこの鳩山という人が発した「Trust Me」という言葉の引用に恐らく間違いない(中沢氏本人は否定しているが)。しかしこの鳩山という人は,その舌の根も乾かないうちに同盟国のトップを裏切るような発言をしている。この人や民主党政権以外の現場の人間やアメリカの政権担当者,現場の人間のほとんどは現状に危機感を抱き,憂慮しているはずである。鳩山という人の度重なる無責任発言と比べれば,中沢一等陸佐の発言は極めて真っ当である。