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弁護士ブログ

2017/06/09

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私がこのブログのアップ(更新)を目論んでいる現時点で,英国の総選挙は意外なことになっていますね。メイ首相率いる保守党議員数は,議会での過半数を割り込んでしまう結果となるのが確実のようで,メイ首相の進退さえも取りざたされております。

 

メイ首相はついこの間,サッチャー元首相に続いて英国史上2番目の女性首相になったばかりだというのに・・・。私はこの人のお顔は好きです。どこぞの知事とは違って何かしら気高さと気品がありますからね。何とか頑張って欲しいものです。

 

さて,これとは全く次元が異なり,コマーシャリズム(商業主義)に完全に乗っかってしまっていると思われるAKB48の「総選挙」とやらも行われております。青少年諸君,そんなことにうつつを抜かしているのではなく,日本の伝統文化や古典,歴史を学び,この愛すべき日本国の次代を担う存在になってくださいよね(笑)。

 

このAKB48の「総選挙」とやらのシステムはよく知りませんが,要するにアイドルの人気投票でCDなど1枚を買うごとに投票権が付与されるのでしょうか・・・。ますますCDの売上が見込めますね。でも私はそういうのには冷めております。

 

と,ところがですよ!規模は違いますが,昔にも似たような商売があったようなのです。大正末期から昭和10年までの間,銀座に「カフェー・タイガー」という喫茶(ビール等も出される)があり,美しい女給さんが同席してくれるサービスもありました。当時の文壇の大御所であり文藝春秋の社長でもあった菊池寛も足繁く通ったようです。そして,この「カフェー・タイガー」では美人投票の催しがあったそうで,AKB48の総選挙とは全然規模は違いますが,女給さんの美人投票なのです。ビール1壜を注文すると1票になり,客が好みの女給に投票する訳です(笑)。

 

永井荷風の「断腸亭日乗」には,「カフェー・タイガー」通いの菊池寛に関する描写が出てきます。菊池寛には申し訳ありませんが,次に引用することにします(笑)。

 

「菊池寛某女のために百五拾票を投ぜし故麦酒百五拾壜を購ひ、投票〆切の翌日これを自動車に積みその家に持帰りしといふ。これにて田舎者の本性を露したり」(昭和四年四月初五)

 

「田舎者の本性」とはひどい言われようですが,菊池寛はお気に入りの女給さんに投票するために,何と,ビール(麦酒)150本を購入し,投票の翌日,それを車に積んで自宅まで持ち帰ったというのです(爆笑)。

 

でもこの菊池寛は何となく憎めないところがあります。陰湿なところがありません。彼は文藝春秋のライバルであった中央公論(嶋中雄作社長)の「婦人公論」誌上に掲載された広津和郎の「女給」という小説で暗に女給カフェー通いを暴露され,怒り心頭,怒髪天を衝き,単身中央公論のビルに乗り込み,かねてから不仲であった嶋中雄作に文句を言いに言ったのです。その際に机をはさんで嶋中を殴ろうとしますが,丸まっちい身体で手が届かず,仕方なしに振り上げた拳で隣にいた「婦人公論」編集長の頭を殴ってすぐに社外に逃走したというのです(笑)。

 

ただでさえ,社長同士が不仲,そしてライバル関係にあった文藝春秋と中央公論はその後,中央公論は菊池寛を暴行罪で刑事告訴に踏み切り,他方,菊池寛は名誉毀損で中央公論を告訴する騒ぎに発展します。

 

菊池寛という人,誠に人間くさく面白い人で,「仕事中に遊ぶな」という遊技禁止令を社長として文藝春秋の社員に出したにもかかわらず,社内で一番最初にこの遊技禁止令を破ってしまったのは他ならぬ菊池寛自身であり,編集室内で卓球をしていたようです(笑)。

 

私は隔月刊の「表現者」という雑誌を愛読しているのですが,その中でも特に面白いと思っているのは,評伝作家であり評論家の澤村修治が書いている「記憶の王国-暴れん坊と畸人の時代」という記事で,今年5月号に掲載された畸人こそが菊池寛だったのです。

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