先日,ある会合で割と長いスピーチを2つほど聞かされた。講演だったらともかく,スピーチなんだから,簡潔明瞭で何か一つ聞き手の心に残るものを与えてくれればいい。しかしながら,その時のスピーチは何やら長いだけでなく,一人は一つの文章の中に何度も「エー」を入れて聞きづらかったし,もう一人は一つの文章の中に何度も「まァ」を入れてこれまた聞きづらかった。
これは癖の中でも,口癖というやつだろうが,確かに無くて七癖というように人にはいくつか癖というものはあるだろう。これは癖と言えるかどうか判らないが,あかねちゃんという僕の娘は,風呂に入っている時に,EXILEの歌などを大きな声で歌っていることが多い。またうちのかみさんは,何かに集中しているような時には,右斜め後方あたりの髪の毛を右手で何やら揉みしだくような仕草を何度も繰り返す癖がある。
そういう僕にも癖はある。ひとつ思い浮かぶのは,耳たぶを耳の穴の中に入れるという,とても奇妙な癖がある。これは季節限定で,主として冬などの寒い時期に出現する癖である。この癖は比較的若いころから発現し,その歴史は長い。その癖の歴史的沿革というか,目的は何なのかについて考察してみる。耳たぶというのは一般的に人間の身体の部位の中でも最も冷たい部位である。やけどをした時などに耳たぶを触るように。寒い時期の耳たぶはとても冷たくて可哀想だとの配慮から,少しでも暖かくしてあげようと耳の穴の中に入れて耳の穴の暖かい温度を伝達してやろうという目的があったのではないか。あるいは,耳たぶのことを思ってというよりも,冷たい耳たぶを耳の穴の中に入れると,ひんやりとして気持ちいいものである。だから,自己の快楽の追求という目的があったのかもしれない。あるいは,その両者だったのかもしれない。いずれにしても,この癖は今も直らない。