私も長いこと生きておりますので(笑),書物を読んで大いに感動した経験はこれまでに数え切れないほどありますが,「裏切られた自由【上・下】」(ハーバート・フーバー著,渡辺惣樹訳,草思社」という本を読んだ後の大感動は,本当に久しぶりの体験です。誠に素晴らしい書物でした。
ハーバート・フーバーという人は,第31代アメリカ大統領で,ルーズヴェルト,すなわち,資源の乏しい日本の首を徹底的に絞め上げて追い詰め,念願の「裏口からの参戦」(Back Door to War)を果たしたフランクリン・デラノ・ルーズヴェルト大統領の前任者です。私の頭の中に浮かんだ多くの読後感のうち,まず感じたのはフーバーという人はアメリカ大統領経験者という経歴でありますが,まずは希代の歴史研究家(しかも第一級の),そして人道主義者だったという点です。フーバーが第一級の歴史研究家であるといっても象牙の塔に閉じこもった学者ではなく,何よりも第二次世界大戦前夜という時期にアドルフ・ヒトラーやネヴィル・チェンバレンに実際に会って意見交換等をしていますし,戦前,戦中にわたって間近でルーズヴェルトを見て来ており,各国の要人と書簡のやり取りや情報収集を行った正に生き証人でもあります。その論述内容は決して机上の空論などではないのです。
この本のサブタイトル(副題)としては「~フーバー大統領が語る第二次世界大戦の隠された歴史とその後遺症~」と刻まれ,さらに本のカヴァーには次のような記載があります。
「本書は第31代アメリカ大統領ハーバート・フーバー(任期1929~33)が第二次世界大戦の過程を詳細に検証した回顧録である。第二次世界大戦とは何だったのか-。従来の見方とは真っ向から対立する歴史観をもつ本書は長い間、公にされなかったが、2011年に米国で刊行され議論を呼んでいる。さまざまな情報にアクセスできたアメリカの最高権力者が、20年の歳月をかけて完成させた第一級の史料である。」
このようなカヴァーの紹介文章を読めば分かりますように,この本の内容は,いわゆる「歴史修正主義」による書物と呼ばれてしまうのでしょうが,私はかねてから述べているように胸を張って「歴史修正主義者」でありたいと思っております。この本はいわゆる「東京裁判史観」に一石も二石も投じる内容であり,かつ,真実を語っている書物です。
上巻は約700ページ,下巻も約500ページあって,かなり読み応えがありますが(笑),騙されたと思って一度読んでみてください。「目から鱗」ものですよ。決して嘘は申しません。
この本を読んでいて思わず泣けてきてしまった一節をご紹介しましょう。これは著者(フーバー)が,「客観的な視点を持つ英国の歴史家ラッセル・グレンフェル大佐は、次のように書いている。」として,同歴史家の次のような文章を引用している箇所でした。
「ある程度の事情がわかっている者は、日本が悪辣な奇襲攻撃をアメリカに仕掛けたなどとは考えない。真珠湾攻撃は、予期されていただけでなく期待されていた。ルーズベルト大統領がアメリカを戦争に導きたかったことに疑いの余地はない。ただ、政治的な理由で、最初の一撃は相手側から発せられる必要があった。だからこそ日本に対する締め付けを強めていったのである。その締め付けは、自尊心のある国であれば、もはや武器を取るしかないと思わせるところまでいっていた。アメリカ大統領によって日本は、アメリカを攻撃させられることになっていた。オリバー・リトルトンは英国の戦時生産大臣であったが、一九四四年に、『日本は真珠湾を攻撃するよう挑発されたのである。アメリカが戦争に無理やりに引きずり込まれた、などと主張することは茶番以外の何物でもない」と述べている。」(同書529~530頁)