「そうだ,もう一度あれが読みたい!」と思い立ち,自宅の部屋の隅々まで目をやってある本を探そうとしていましたら,ひょんなことから「ブルグミュラー25の練習曲」というピアノ教則本(楽譜)が目に入りました。
このブルグミュラー25の練習曲集というのは,当時はバイエル練習曲集を終えた頃からこれを弾いていくというのが練習過程の定番になっていました。バイエルの場合はそれぞれの曲に何の標題も付けられていない練習曲集ですが,このブルグミュラーのものは25曲のそれぞれに,例えば「牧歌」,「別れ」,「バラード」,「舟歌」,「つばめ」,「貴婦人の乗馬」などといった標題が付けられており,その標題どおりに感情移入し,いよいよ自分がピアニストになったかのように気分が高揚し練習していてもワクワクしていたものでした。この練習曲集の定価を見てみますと,「130円」とあります。そして,各曲の冒頭部分には先生からオーケーが出た印として○で囲まれた「合」の文字が鉛筆で記してあります(合格したという意味です)。もうかれこれ48年も前のことです。この練習曲集の楽譜をぺらぺらめくっておりましたら,第5番目に「無邪気」という標題の曲がありましたので,ちょっと弾いてみました。いやー,本当に懐かしい・・・。
話は変わりますが,無邪気といえばうちのカミさんも本当に無邪気なものです。彼女はテレビで放映されるいわゆるサスペンス・ドラマを観るのが何よりの楽しみです。そして,サスペンス・ドラマを私も横で並んで観ているような時,私がテレビの方を向いているフリをしてそっとカミさんの表情を盗み見しますと,その表情の豊かなこと,無邪気以外の何物でもありません。彼女は,ドラマの登場人物と身も心も同一化し,何のためらいもなく感情移入し,ヒロインや刑事さんらと一緒になって笑ったり,怒ったり,悲しんだり,頷いたりしているのです(笑)。横でそういった無邪気な表情を見ている方がかえってドラマより面白いくらいです(笑)。
カミさんのサスペンス・ドラマ好きはその歴史が古く,その昔は「火曜サスペンス劇場」とか「土曜ワイド劇場」とか,確実に計算できる番組があったりして(笑),ほとんど毎日のようにテレビ放映がありましたよね。それがその後は制作予算の制約の問題なのか,制作現場が忙しすぎるのかは知りませんが,そういったサスペンス・ドラマの定番の名物番組が徐々に無くなっていきました。そういった時期のカミさんの落胆ぶりといったら,かける言葉もないくらいでした(笑)。でも,現在でも地デジやBSでそこそここの手のドラマが放映されておりますし,彼女にとっても貴重な娯楽の一つになっているようです。
皆さんの周りにもいませんか。うちのカミさんのように無邪気に,ヒロインや刑事さんらと一緒になって笑ったり,怒ったり,悲しんだり,頷いたりしている人(笑)。そしてむしろ横でそういった無邪気な表情を見ている方が面白いくらいの人は・・・。