河野太郎という政治家が,内閣府「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」(以下「TF」といいます。)の活動に力を入れ,自然エネルギー財団事業局長の大林ミカなる人物を重用し,挙句の果ては彼が防衛大臣の時に自衛隊の施設は100%再エネを目指すという目標が設定されてしまったように,「再エネ最優先」に血道を上げる理由は何なのでしょうか。
それは確かに「再エネ最優先」が河野太郎という政治家のライフワークの1つなのかもしれません。でも,果たしてそれだけが動機なのか。日本端子株式会社は,神奈川県平塚市に本社が所在し,中国の3か所に子会社を置き,端子やコネクタを主力製品とした設計,製造,販売を営業目的としています。その代表者(代表取締役)は彼の弟である河野二郎,その大株主は彼の父親である河野洋平(例の悪名高い「河野談話」の主),そして河野太郎もかつてはこの会社に在籍し,現在もその株式を一部保有し,同社はかつては日本の太陽光パネルメーカー向けの端子・コネクタの製造をしていたことがあります。また同社の中国における子会社の営業範囲内に太陽光発電装置等の販売が含まれているとの情報もあります。
また,大林ミカなる人物は,このたび中国の国営企業である国家電網公司(世界最大)の透かしロゴを付けた資料をTFに提出した訳ですが,彼女が事業局長を務める自然エネルギー財団は,実はその設立者・会長はあのソフトバンクグループ代表の孫正義です。孫会長は,自然エネルギー財団の設立イベントで,「アジアスーパーグリッド構想」(「ASG構想」)を発表しています。
この「ASG構想」というのは,要するにアジア全域(もちろん中国を含みますし,むしろ中国が中心となるでしょう。)を送電線で結び,国家間で太陽光や風力,水力など再生可能エネルギーの相互活用を進めるというもので,この自然エネルギー財団は,資料にロゴが入った中国の国家電網公司と連携しながらASG構想を進めた時期もあったのです。
我が国が中国と送電線で結びつき合うなんてとんでもないことでございます(笑)。かの国は機嫌が悪くなったらいつでも送電ストップ措置をとるでしょう(笑)。いわゆるレアアース問題の時もそうでしたし,最近では処理水を「汚染水」などといちゃもんを付けて平気で日本産の水産物等の輸入禁止措置をするくらいですから。こういうのを傍若無人というのでしょうね。
それにしても,この4月から「再エネ賦課金」のせいで電気料金の支払額が増えますね。あの悪夢のような民主党政権時代,菅直人が首相をやっていた当時,孫正義が「(再エネ電力)固定価格買い取り制度」新設に向けて菅直人をおだてまくってニヤニヤし,これに負けず劣らず菅直人もニヤニヤしていた醜悪なシーンが思い出されました(笑)。
この醜悪なシーンを思い出し,そしてこのたびの「透かしロゴ問題」を考えた場合,レントシーキングという言葉を想起してしまいました。レントシーキングとは,「特殊利益追求論」とも呼ばれ,企業がレント(参入が規制されることによって生じる独占利益や,寡占による超過利益)を獲得・維持するために行うロビー活動等を指すそうです。ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ジョセフ・スティグリッツは,米国において金融関係者や大企業CEOら富裕層の富は,民間企業が政府と結びつき公共サービスの仕組みを変え,市場のルールを変え,市場の公平な競争を上手く機能させないように講じられた結果によるもので,これを「レントシーキングによる富の収奪」と呼び,批判しています。
そういえば,我が国も「構造改革」などと称していろんな会議体(例えば,「規制改革なんとかなんとか審議会」など)を設置し,企業家など民間の委員が恣意的に選任され,それぞれのビジネスの展開,拡大に資するような活動,提言,働きかけを行っていますよね。例えば,竹中平蔵などは人材派遣大手のパソナの会長をやっておりましたが,次から次に人材派遣業界にとってビジネスチャンスとなるような規制緩和を政府に提言等していたでしょう。これもレントシーキングの一態様だと思っています。
今回の「透かしロゴ問題」の背景にある問題状況も,実はレントシーキングの影がちらついているように思えてならないのです。