消費税の納税時期が大変だな,という個人的で憂鬱な問題があることは否定しませんが(笑),それはそれとして本当に消費税率は10%にアップされることになるのでしょうか。本当なんでしょうか。
いわゆるアベノミクスの第1の矢である大胆な金融緩和,第2の矢である積極的な財政出動の効果はちゃんと奏功していると思いますし,当初のインフレ目標の2%には及ばないものの,インフレ傾向は徐々に定着しつつあります。でも,さらに消費税率を10%にまで上げるとなると,本来の目的であったデフレ脱却や景気回復は夢のまた夢に終わってしまうのではないかと危惧しております。
私もいずれ消費税率は10%に上げなければならないと思ってはおりますが,問題はその時期なのです。あの第二次橋本内閣での失敗と同じ轍を踏むのではないのか・・・。そうです,1997年,消費税率が3%から5%に上げられたのですが,この増税によってその後景気は激しく下降線をたどり,インフレからデフレに突入し,日銀の金融政策の失敗もあってそのまま長い,長いデフレ経済の泥沼にはまり込んでしまいました。実は現在,この1997年の頃との比較でも,実質賃金は勿論,鉱工業生産指標も悪い状態なのが消費税8%増税後の日本経済なのです。
確かに財政規律が重要であることは勿論です。消費税率が1%アップするだけで約2.7兆円の税収増があり,2%では約5.4兆円となります。しかし,より長い目で見て景気が悪くなり,名目GDPが減ってしまったのでは,結局は税収増にはつながらないでしょう。税収を増やすためには名目GDPを上げなければならない訳ですから。景気が悪くなれば消費マインドは低下し,内需も縮小します。
どうも今の政府は,あの1997年の増税時の失敗と同じ轍を踏もうとしているように思え,アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような気がしてなりません。この時期(実際には平成27年10月)のさらなる消費税率アップが景気の腰折れ要因となることは間違いないでしょう。ノーベル経済学賞を受賞したアメリカのクルーグマン博士も,「日本経済は消費税10%で完全に終わる。」と論評しています。経済評論家の三橋貴明さんも,「アクセルと同時にブレーキを踏むという常識では考えられないことをしてしまいましたので、今後、車(日本経済)はどこへスピンするかわかりません。本年4月からの消費税率引き上げによって、また円安による輸入インフレの発生とも相俟って、実質所得は減り続けているのが現状です。消費の低迷が今後も続きそうです。」と述べています。
消費税率を10%へ上げる時期は,デフレ経済を脱却し,実質的に景気回復がなされた後でも遅くはないでしょう。