・・・・・・・は,・・・歯が取れちゃった(笑)。僕も歳をとったもんだなぁ。前に歯医者さんで処置してもらった箇所である。歯が取れたと分かった瞬間は,一時的にでも身体の完全性が失われたので,ショックではある。
早速予約を入れ,取れた歯を持って行きつけの歯医者さんに出かけた。この歯医者さんは,恐らく僕と同年代であろう。治療に関する説明を十分にしてくれるし,何しろ腕が確かだ。診察券を見ると,初診が平成7年になっているから,かれこれ14,5年になる。
でも,いくら歯医者さんの腕が確かでも,例の「キーーーーン,キーーーーン」という歯を削る機械の音を聞くと,やはり緊張するし,不安で胸が高鳴る。よく映画の予告編などで「手に汗握る,感動スペクタクル巨編!」などのキャッチフレーズがあるが,僕は映画を見たくらいで手に汗など握った経験は全くない。逆に必ずと言っていいほど手に汗を握ってしまうのは,歯医者さんで治療を受けている時である。さらに悪いことに,僕は「痛み」に対して非常に臆病で,特に「キーーーーン,キーーーーン」などの時は,緊張で体が硬直してくるのだ。あたかも死後硬直が始まったかのように・・・・・。
その治療の日に使用された機械はどうやら2種類で,「キーーーーン,キーーーーン」の高音域のものと「ゴーーーーン,ゴーーーーン」の低音域のものだった。ソプラノとバス・・・ち,違うかぁ(笑)。結局この時は,何となく自分でも分かってはいたのだが,幸いにして歯の実質を削る時間は比較的短く,かみ合わせ調整のために上にかぶせる金属を削る時間の方が長かった。でもねぇ・・・,上にかぶせる金属を削るとはいっても,やはり削られている間は長く感じる。僕の場合,やはりその間は手に汗を握りつつずっと死後硬直状態であった。
2,3回は通わなければならないのかなと覚悟していたのだが,何と,その日1回の治療で見事に元通りに復旧し,思い切り噛めるようになったのである。素晴らしい。歯医者さんはすごい・・・。思うに,歯医者さんは,口腔解剖学,口腔外科学,歯内治療学などを学んだ学者としての側面も勿論あるが,何より「職人」ではないかと思う。僕の場合は,いい腕の職人に出会えて良かった訳だ。